ある日、友人にビリヤードに誘われた。
薄暗い酒場でカウボーイハットを被ったやんちゃな男がやるイメージだ。
そんなシーンをよくハリウッド映画で観た。
思えば、ビリヤード自体はやってみたかったものの
日本ではやったことがなかった。
長いキュー(スティック)で玉を弾く。
思いっきり当たると気持ちがいいだろうな。
連れて行ってくれるというのでお願いした。
初ビリヤード!
自然と気分が昂る。
さて、どこへ行くのだろう!?
向かった先はバーに併設されたビリヤード場。
アジア系の人はどうやら店内にはいない。
地元に愛される店だ。
ごついがたいのオージーたちで溢れている。
ちょっと敷居は高いが、まぁ一人じゃないし、なんとかやるだろう。
店内は薄暗く、そして結構狭い。
ビリヤード台は4台ほど置いてあるのだが
それぞれの台の距離は近く感じた。
まずはキューを取りに行く。
そして一丁前にチョークを先端にスリスリする。
これが玉を弾くときの滑り止めになるらしい。
玉を取りに行った友人が戻ったところでプレー開始だ。
エイトボールとやらを教えてもらう。
二人で玉をポケットに落とすゲームだが、8番のボールを境にして狙う玉が分かれる。
1番から7番を狙う人と9番から15番を狙う人だ。
そうして、狙う番号を落としてから、最後の8番を落とした人が勝ちだ。
始めてみて気が付いたのは、まともにキューが玉に当たらないということだ。
まっすぐ打ったつもりでも玉の横っ腹に当たる。
「ちくしょう!全然あたらんわ!」
思わず大声が出る。
友人はそこそこうまいので、玉を飛び越えるジャンプボールなどをやってみせる。
それぐらいなら、できるんじゃないかとやってみるができない。
また声が出る。
楽しくなってきたな。
やればやるほど、うまくなっていくのが分かった。
調子に乗る。
しかし、残念ながら楽しい雰囲気は続かなかった。
狭い店内。
キューが隣でプレーしていたオージーに当ってしまった。
そのとたん、
「What a *** are you doing?」
と言われると同時に、でかい腕が首に巻き付いた。
「oh sorry」と言ったものの、すぐに腕は離れない。
その時間は長く感じた。
体で謝罪を表したが、なかなか。
ようやく離れたが、生きた心地がしなかった。
その後、どうなったか覚えていないが、すぐに店を出たんだろう。
何事も周りをしっかり見ないとえらい目にあうことを身をもって経験した日だった。
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