ホームステイを追い出されてから、学校へ行った。
「ホームステイを追い出されたんですが、すぐに住めるところはありますか?」
「それは可哀そうに。じゃあドミトリーなんかが良いんじゃない」
ってことでドミトリーに決まった。
早速、案内してもらう。
ドミトリーは丘の上に建っていた。
学校のスタッフに連れられて中へ入る。
中はなんともひなびた感じがあった。
私のイメージでは昔のヨーロッパにありそうな石づくりの建物。
中は少し暗めで華美な装飾などはなく、全体的にくすんだ赤色だった。
緑や青の鮮やかな自然が広がる外の世界とはまるで違う。
とてもシックでタイムスリップしたような感じがした。
2階には食堂、私の部屋は最上階4階だった。
見晴らしは抜群だったが、なんというか窓の位置が低くて
落ちないか心配になるぐらいで、あまり窓から外を見ることはなかったように思う。
ドミトリーはありがたいことに食事付だった。
毎晩、食事のときは食堂まで行く。
食事はバイキング方式でトレーを持って列に並んだ。
初めはどこからスタートして、どう取ったりしたらよいのかわからず、とりあえず見る。
結構用心深いのだ。
大体流れは把握したので、意を決して前の人に合わせて動き出す。
欲しいものをようやく取って席に着く。
といってもテーブルには私一人だ。
そして、周りからも「こいつは一人だ」と見られている。
こちらから話しかけるような勇気もないものだから、無心になって急ぎ食事を平らげる。
そんな食事を連続してしているものだから、心配になったのか
一人の黒人の男性が何か言いたげにこちらを見つめている。
しかし、彼はいつものグループの仲間と一緒にいて距離が縮まらない。
「いつからドミトリーにいるのか」
「学校はどうか」
「目標はあるのか」
「どこから来たのか」
今となればいろいろと出てくるのだが、二十歳そこそこだった私には
コミュニケーションをとる話題は何も頭に浮かばなかった。
そうこうしている間に1週間が過ぎ、ドミトリーを出て次の家を探し始めた。
単身アパートは案外早く見つかり、2週間滞在したドミトリーを出ていくことに。
今でも留学生活を思い出すとき、ドミトリーでもっと友達を作っておけばよかったと後悔する。
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